この世界は弱肉強食だ。
人間、魔物、ドラゴン、魔族、悪魔──すべての存在は死を避けられない。
弱者から淘汰され、強者もいつかより強い者に命を奪われる。
この世界で生き残る方法は何か?
答えはない。すべてが理不尽に死んでいく。
それでも、探し続ける。
どこかに、生きる意味があると信じて。
ーーーーーーーーーー
高くそびえる山、その頂には威圧的な魔王城が鎮座している。

だが、今その城にはいつもの不気味な静けさがない。風に乗って、不安に駆られたささやきや、鎧のこすれる音が冷たい石壁に反響していた。
魔王の座が揺らぎ、城は混乱に包まれている。
蒼白な顔をした魔人たちが慌ただしく廊下を行き交い、使い魔の小走りする音が床に響く。その中には、門を固める魔人や戦闘準備に忙しい兵士の姿もあった。
フレッドは、なぜ今このような事態に陥っているのか理解できなかった。ただ一つわかることは、この魔王城がかつてない窮地に立たされているということだけだった。
父上、いや、魔王様は誰にやられたというんだ?
フレッドは近くにいる魔人に問いかけた。
詳しくは分かりませんが、恐怖の悪魔だと思われます
恐怖の悪魔?なんだそれは?
フレッドは眉をひそめる。
……古くからの知り合いだと聞いています
魔人は目をそらす。
フレッドは凍りついたように立ち尽くしている。
父上が……知り合いにやられたと?
魔人は黙って頷く。
フレッドの心は混乱と怒りでいっぱいだった。魔力が高まり始めるのを感じたが、突然、後頭部に衝撃が走り、意識が遠のいた。
ったく、危ない奴だ。下手したら魔力が暴走して、魔王城が大変なことになっていたぞ
フレッドを抱えながら、魔人がため息混じりに呟く。
近くにいた魔人が苦笑を浮かべながらも、気を取り直してフレッドを抱えているセンテンに話しかけた。
センテン様
その声に反応して、センテンは振り返り、フレッドをしっかりと抱え直しながら、話しかけてきた魔人に答えた。
頭を下げなくて良い。それにまだ父上は生きている。まぁ、植物状態のようだから、目覚めるのにどれくらいかかるかわからないがな
センテンはあたりの騒がしい様子に面倒臭そうな表情を浮かべたが、すぐに切り替えて真剣な表情になり、大声を張り上げた。
まずは落ち着け。お前達!!
その声は魔王城全体に鳴り響いた。センテンは魔王城全体に聞こえるように音声魔法を使っていた。その声による覇気は、慌てていた魔人達を落ち着かせるのに十分な力があった。先ほどまでの喧騒とは裏腹に、城内はしんと静まり返った。
完全に静かになったのを感じると、センテンは満足そうに頷き、先ほどよりも少しだけ声の音量を下げて話し始めた。
魔王様、我が父上がやられてしまったことで皆不安であろう。しかし父上はやられはしたが死んではいない。父上が目覚めるまで我が魔王代理としてお前達を導いてやる。異論があるやつは我自ら直々に相手をしてやる。1日間は闘技場にいてやる。我に勝てれば、もちろん魔王代理はそのものが引き受けて良い。では、明後日までに挑んで来るものがいなければ我を認めたことにする
そう言い終えるとセンテンは魔法による念話を切った。
さすがでございます。センテン様。あれほど不安に満ち、騒がしかった魔王城が一瞬で冷静さを取り戻しました
面倒ごとは嫌いだが、やらなきゃならない時は誰にでもあるからな。それが俺にとっては今だってことだ。とりあえず、フレッドを医務室に連れて行ってくれないか?俺はさっきの放送の通り闘技場に行かなければいけない。はぁ、いやだいやだ。忙しいのは本当に面倒くさい
センテンは不平不満を漏らしながらも、歩を止めなかった。足音が石の床に響き、彼の緊張した呼吸がその背中越しに伝わってきた。今、歩を止めてしまったら、この先の魔族が滅んでしまうことを肌で感じ取っているからだ。
そのため、嫌なことでもセンテンは率先して行う。なぜなら、彼は魔王の息子だからだ。
立派でございますよ。センテン様
センテンの覚悟の大きさを彼の背中で感じ取った魔人は、関心したように言葉を漏らしていた。その背中を見送った後、フレッドを医務室に連れて行った。
魔王城での慌ただしい一日、それは始まりに過ぎなかった。
ここまでブログ小説を読んでいただき、ありがとうございました!
次話「ドラゴンスレイヤーの冒険」は準備中です。
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